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中島祥貴税理士事務所

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社内の営業コンテストによる成績優秀者への旅行代金の諸掛は今期の費用となるか!?【税務調査】

2019-07-08
納税者である
X株式会社(以下、「X」という)は
自動車販売を業とする
3月決算法人である。


Xは、
平成9年1月6日から
同年3月31日までを
キャンペーン期間として、

全従業員を対象に、
新車増販のコンテストを
実施し、

その営業成績に基づく
ポイント達成上位の
従業員を

特別賞として
オーストラリア旅行に
招待することとした。


また、
本件コンテストの内容を
記載した
書面は

各営業所に
掲示するなどして

その内容を
従業員に
告知していた。


平成9年3月31日までに、
Xの従業員のうち
少なくとも50人が
必要なポイントに
達成したことが
判明した。


Xは、
同日までに、

旅行会社から
本件旅行の費用が

1人当たり
204,000円であるとの
見積りの掲示を
受けていたため、

同日、
その旅行会社から
1,020万円の
旅行ギフト券を
購入した。


この見積書には、
出発前に
運賃等の条件に
変更があった場合には、

旅行経費の変更があることの他、

記載のない事項については、
旅行会社の
旅行業約款に従う旨の
記載がある。


その旅行業約款にも、
場合により
旅行代金を変更することがあり、

旅行代金の増加又は減少は、
旅行者に
帰属すると
規定されている。


平成9年4月10日までに、
更に7名の従業員が
必要なポイントを
達成したことが判明し、

同日、
Xは、
旅行会社から7名分、
142万8,000円の
旅行ギフト券を
購入した。


入賞者の中から
1名辞退者が出たため、

最終的には
56名を
本件コンテスト等別賞入賞者として
本件旅行に
招待した。


本件旅行は、
平成9年5月28日〜2月2日までの期間と
6月4日〜9日までの期間の
2回に分けて
実施された。


Xは、
平成8年4月1日から
平成9年3月31日までの
事業年度
(以下「本件事業年度」という)
の法人税確定申告の際、

本件コンテストの費用のうち
1,020万円を
「新車コンテスト諸掛」
として

損金の額
に計上した。


────── ∞ ────── ∞ ────── ∞ ───────

【納税者】、

期末時点で
特別賞入賞者の人数を
既に50名が
該当していると把握し、

同日までに
1人当たりの
本件旅行費用が
204,000円
と確定したため、

債務は
成立している。


入賞基準は、
平成8年12月25日までに
決定され、

全従業員に
公表されており、

該当者の選定は、
基準に従って
機械的に行われるものであって、

平成9年4月12日の社内稟議は、
正式な取締役会ではなく

単なる内部的確認手続き
にすぎない。


本件のセールスコミッションは、
増販コンテストにより
一定額以上の売上げが
計上された時にのみ
発生するものであり、

期間的、経常的に
生じる費用とは
その性格を
異にするものであるから、

「変動費」
に近い性格を
有するものである
といえる。


そうすると、
本件セールスコミッション費用は、
法人税法22条3項1号の
「その他これらに準ずる原価」
に該当するので、

費用収益対応の原則が
適用されるというべきであり、

Xの本件事業年度の
損金の額に
算入されるべきである

と主張した。



【税務署】、

本件旅行は、
従業員に対する
賞与の性質を有する。


賞与は、
使用者側が
各人別の支給額を決定し、

これを被使用者に
通知して

はじめて
被使用者側に
債権が生じ、

使用者に
債務が成立する。


本件旅行の招待者は、
平成9年4月12日の
Xの取締役会の稟議による
確定まで、

各従業員は
自らが
成績上位者に
該当するかは

知り得ない
状態であるため、

期末までに
債務が
成立したとはいえない。


仮に、
債務が成立しているとしても、

成績上位者として
確定した者を
旅行に同行してはじめて

給付がなされたと
見るべきである。


そうすると、
旅行実施日である
平成9年5月28日と同年6月4日まで、

具体的な原因事実は
発生していない。


Xと旅行会社間の契約では、
本件旅行が
終了するまで

旅行代金が
確定しないことは
当初から
明らかであった

と主張した。

────── ∞ ────── ∞ ────── ∞ ───────

どちらの主張が
正しいのでしょうか?


いきなり、裁決を見るのではなく
これはどういう判決になるか
すこし考えてみてください。


税務というと
決算書の数字や申告書をイメージするかもしれませんが、
そもそも税法に則った判断処理のこと
なのです。


その判断処理を間違えると
払う必要のないキャッシュが
会社から失われてしまう可能性があります。


この判断処理を
今まで間違っていた納税者の割合や
なんと7割以上(国税庁のHPより)


判断処理
大丈夫ですか?


本来の裁判判決は
難解で読むづらいものになっていますので、
読みやすいように多少
書き換えています。

────── ∞ ────── ∞ ────── ∞ ───────

【裁判官の裁決】、

平成9年3月31日の時点での
204,000円の金額は、

最終的な旅行招待者や
旅行日程等が
未確定の段階における

あくまで見積りの金額であって、

Xに交付された見積書上も、
約款上も、

その金額の変動が
あり得ることが
明記されていた。


そのため、
費用を
合理的に算定することができた
ということはできない。


Xの主張する
セールスコミッション費用が
歩合給に該当する
ようなものであるならば、

辞退の場合の
現金支給についての
定めがあってしかるべきであるのに
その定めはなく、

歩合給であるならば、
辞退者の意思に関係なく
役務提供の対価として

当然に支給されるべき
性質のものである
ともいえるのに、

旅行を辞退した
社員に対して
現金支給をしていない。


これらからすると、
本件で損金として計上された金員は、

確定した額の
セールスコミッション費用である
とは断じがたく、

販売促進策として
とられた報奨金であり、

その内容は
本件旅行が終了するまで
確定しないから、

債務が
確定していたとはいえない。


法人税法22条3項1号に基づく
基本通達2−2−1は、
 
収益に対応する原価については、

収益・費用対応の見地から、
その額が確定していない場合にも
その見積計上をすることができることを
明らかにする一方で、
 
原価に該当しない事後的費用は、
債務確定基準が適用されて、
 
見積計上が認められないことを
明確にするものである。

Xのような自動車販売業者においては、
あらかじめ個々の商品ごとに
支払基準によって
定められている
販売手数料のようなものが
それに当たる
というべきである。


そうすると、
本件で損金に計上された
旅行費用は、

売上高に応じて発生するものではなく、
全社的基準でもって
全販売台数の売上が
一定の基準を超えたときに
初めて発生する費用であり、
 
自動車の売上とは
個別的対応を有しないものであるから、
法人税法22条3項1号の
「売上原価」にも、
「その他これに準ずる原価」にも
該当しないというべきである。

 
同費用は、
販売費・一般管理費等に該当するもので、
 
期間対応の原則と
債務確定の原則が
適用される場面であるから、
Xの同主張は採用できない

とした。

「福岡高等裁判所 平成13年11月15日判決」

────── ∞ ────── ∞ ────── ∞ ───────

売上原価は
実際の金額が
確定していなくても

見積もりで
経費計上することができます。


今回の判決は
社内の営業コンテストによる
成績優秀者への
旅行代金の諸掛が

売上原価
もしくは売上原価に準ずる費用
に該当するか
どうかを

争った
内容でした。


旅行代金の諸掛を
売上原価とみなすのは
無理がありますよね。


全国で講演していた時の
個別質問で

「成績優秀者への
 ご褒美の旅行は
 経費になりますか?」

という質問を
よく受けていました。


答えは

「経費にできますが、
 社員への賞与になります」

と答えると

「え、福利厚生費か
 何かで落とせないのですか?」

と聞かれていましたが、

上記裁判の中でも
出てきているように

『社員への賞与』
が正しいの
ご注意ください。


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